< ジャズピアノがつらくなったら >




 ジャズピアノを弾いていくなかで、練習に行き詰まってしまったり、つらく
なってしまうこともあるかと思います。
以下の文章は、ジャズピアノを教えている私が、生徒たちに向けて、
行き詰まり打開のための、あるいはジャズピアノをもっと楽しむための
ヒントになればと思って書きました。でも甘い言葉はないと思います。
音楽の楽しさと難しさ、その両方をもう一度確認して、そこから先に進ん
だり、戻ったり、あるいは休んだり、ちょっと他の音楽なんかも楽しんで
みたりしてみてもらえればいいんじゃないかと思ってます。


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 ジャズピアノ、そしてレッスンはどうですか? 楽しい? それともつらい?
つらそうな人をみると僕も胸が痛みます。また、レッスンでやる気になっても、
家に帰るとなかなかピアノに向かう気にならなかったりとか、ありますよね。
僕はそれに近いことがよくあります(笑)。宿題をこなすこと自体は楽しさを
見出しにくいかもしれないけれど、宿題にしたものは、それを身につけると、
レッスンでやった曲以外でも、好きな曲をどんどん自分で弾けるようになる
ものばかりです。また、すでに弾けるようになった曲を楽しんだり、自分で
よさそうな和音や、メロディを探してみたり、好きなミュージシャンをまねして
みたり、外へ出てバンドを組んだり、セッションに行ったり、ライブに行ったり。
なんでも自発的にやってこそ楽しいと思いますし、特にジャズは好きなように
やっていいよという音楽ですからね。レッスンを離れて、自分で新しく練習し
ようとしたときに、改めてレッスンでやったことが生きるんだと実感できると
思います。忘れてなければ・・・。そんなに時間がとれないよ。と言う方は、
逆につらいことを減らしていくのも一つの手ですね。

・アドリブが苦しくて死にそうだ → 先生やCDのまねをする(コピー)。
                      でたらめを楽しむ。

・コピーするのが大変すぎて倒れそうだ → 楽器店でコピー譜を買って弾く。
                           自分で作る。

・コピー譜が難しすぎて頭痛が痛い → CDなど参考にテーマのフェイクや
                   アレンジを考える。
・自分で考えるのが嫌い → アレンジされた譜面で弾く。

・譜面も練習も面倒 → ライブやCDなど、もっぱら聴くのを楽しむ。

右側を下から見ていくと、だいたいこれから始める人が、やると良い順番
ですね。

 ちゃんと宿題をやっている割には上達しないと感じている人はいますか?
もしそう感じているとしたら、直前に出された宿題はやっているけど、以前
やった曲、課題をやめてしまっていませんか?

 ここで、僕の高校時代の成績の話をしてみたいと思います。高校入試頃
の成績でいえば、同じ高校に入った中でちょうど真ん中くらいになるんじゃ
ないかと思います。そして入学後、1,2学期は全然勉強しませんでした。
3学期、膝を痛めて(よくあちこち痛める奴だ)、部活ができなかったので、
仕方なく勉強してみることにしました。すると、面白い現象が起きました。
期末試験の国語がクラスでトップだったのに、同じ時期の実力試験の国語
がクラスでビリだったのです。英語も同じような結果でした。これは、2つの
ことを示していると思います。

「狭い範囲を一生懸命やればできる。思った以上にできる。」
「やらずにいたらどんどん忘れる。思った以上にできなくなる(笑)。」

「God is in the details.」(神は細部に宿る)
・できないものをできるようにするときは、できるだけ範囲を狭めて徹底
してやる。

 例えば、1小節を何百回も弾く。1曲を何千回も弾く。また、一フレーズ
を弾くにあたって、注意するポイントを1つづつしぼって練習する。まず
「リズム」、次に「音程」。それから、どんな雰囲気・表現がいいのか考え
「ノリ」「音の長さ」「アクセント」「音色」などをきめ、「表情」つける。
 そして、そのためにどんな「姿勢、腕、指の使い方」がいいのか考える。
たった1小節のフレーズだって、これだけ考えることがあるんです。この
積み重ねが素敵な音楽として花開くわけです。 一つ一つの微妙な違い
が全体として、「全然違う」ものになるんですね。常に「考える」ことを習慣
づけよう。

・覚えたものは、絶えず復習をする。

 例えば、練習時間の30%はこれまでにやってきたことの復習にあてる。
レッスンでは1曲が長くなりすぎて飽きてしまわないように、おおよそ形に
なったら、その曲を終えて、次の曲に移っています。でも、そこから十分
弾き込むことで、よりよい表現ができてくるでしょう。つまりレッスンは、
料理でいえば、食材を準備し、切ってなべに入れ、おおよその味を考え、
調味料と水を加えて火にかけたところまでですので、後は時間をかけて、
加減をしながら、味をしみこませながら、好みの味に仕上げてみましょう。
ここに時間をかけてはじめて、かっこいいとか、色気があるとか、渋いとか
といった味のある演奏になるわけです。

「かっこいい」「学ぶは真似ぶ」

 「かっこいい」というのは、「おいしい」というのと同様「結果」です。また、
おいしいが、甘いとか、辛いとか、硬いとか柔らかいといった具体的な味、
状態を表していないのと同様、かっこいいというのも好みによる感覚です。
さらに、おいしいというのは、食べる側、つまり受け手側なのと同様、弾き
てではなく、聴き手側の感覚ですから、弾き手としては、自分はどんな
演奏をかっこいいと感じるのか、「このリズム」 「このメロディー」「この
音色」などたくさんみつけ、その中から自分が目指すものは何か、でき
そうなものは何かを考えてみるといいでしょう。


 ピアノを弾くのも初めてなのに、CDの演奏を真似たり、セッションしたり
しながら、どんどん自分で上達していく人もいます。もちろん膨大な時間と
労力がいることと思いますが、簡単そうな演奏のテーマの部分だけだった
ら、できるものがあると思います。先ほど練習するときに色々なポイントが
あるという話をしましたが、CDを聴くときも、同じように、ひとつひとつの
ポイントに注意しながら、聴く必要があります。聞き取りづらい音は飛ばし
てもいいし、合いそうな音を自分で考えるのもよい勉強です。表情やノリも
まねしてみましょう。

 音程だけを拾っている人が多いですが、音楽には音程、リズム、表情、
色々な要素があります。音程だけ100%合ってて、後がいい加減であるより、
全部80%できる方がずっとかっこいい演奏になると思います。ピアノでなく
ても、歌でもサックスでも、聞き取りやすいもの、好きなものをどんどんまね
してみよう! 

 例えば、僕は実はピアニストからの影響より、ベン・ウェブスター(テナー
サックス)、チャーリー・パーカー(アルト・サックス)、綾戸智絵(ボーカル&
ピアノ)、酒井俊(ボーカル)らの影響の方がずっと大きいです。また、CDを
聴くときに、ドラムだけ聴いたり、ベースだけ聴いたりすることもとてもよい
ですし、CDで興味が持ちにくければ、ライブでぜひ、本物の演奏に触れて
みてください。夜出かけられない人、たとえば新宿ピットインには昼の部と
いうのもありますよ。


「浅く広くor深く狭く」 〜練習する曲の進め方

・どんどん曲を進める
 気楽に楽しめる。初心者の場合、楽譜・コードなどを読む力がつく。
 また、いろいろな雰囲気の曲、たくさんのメロディやコード進行に触れ
られるので、演奏より作曲などの参考にしたい人にもお勧め。

・1曲を長〜くやる(難曲ということではなく、深く掘り下げたり様々な形で)
とにかく上達したい人。味わいのある演奏をしたい人。

 もちろん、曲の難易度にもよりますし、練習具合にもよります。
難しすぎる曲を選んだり、理想が高すぎるとドツボにはまりますよ(笑)。
夢は夢として、自分の現在の実力を把握して、そのちょっとだけ上に
目標を置いて、ちょくちょく達成感を味わえるようにするのが、長く楽しく
やるこつだと思います。


「アドリブのフレーズ」「表現」「歌」
 なかなか浮かばないかもしれません。お話と一緒。どんなに言葉を
知っていても、「さあ、何かしゃべって下さい」といわれるとなかなか
しゃべれませんね。まず表現したい思い、話題を見つけ、育てること。
そして、それを表現するための音楽を探し、考え、練習し、表現する。

 言葉を覚えるとき、赤ん坊がまず覚えるのは何だろう。「ママ!」かな?
でも、表情と泣き声だけでも、何か伝えるよね。それから、徐々に母親は、
赤ん坊が何か気持ちを伝えようとしたり、何かに興味を示したりしている
のを見て、それを表す言葉を教えてくれる。そして、その言葉は基本的
には、赤ん坊が使える言葉でなくちゃ意味がない。短く、発音がしやすい
言葉。
 小説を読み聞かせたところで、何も覚えないし、例えば3歳位の子が
覚えたとしても、笑いのネタくらいにしかならないと思う。もちろん、ずっと
続ければ将来小説家になるかもしれないけど、それでも日常の言葉は
日常の言葉として使える言葉を覚えなくては会話にならないよね。
  表現したい思いは、そんなに難しいことでなくてよくて、「楽しい!」
「悲しい。」とか。できればもうちょっとだけ具体的に、「今日はだれそれに
会えてうれしい」「人生疲れた。」「うわあ、何て美しい曲なんだ!」そんな
気持ちがあれば十分。その気持ちを音に乗せて!

 キースジャレットは「たった一音あれば、その中にすべての表現を凝縮
できる」と言います。キースのDVD(またはビデオ)「ライヴ・アット・イースト
1993 」の「solar」から続くエンディングを聴いてみてください。最後の方は
ずっと一音だけを続けていますね。実は、僕はキースの演奏は好みでは
ないのですが、実はこのライブ会場行っていて、このときが、今まで音楽を
聴いてきた中で、もっとも演奏に引き込まれた瞬間でした。残念ながら
ビデオでは、あのときの、あの場だけが、特別な何かに包まれた別世界
になったような、緊迫した空気までは伝えられないようです。

 さて、ピアノで表現する、というのがさっぱり分からないという人に救い
の手を(笑)。あなたが一番好きな歌はなんですか? カラオケボックス
とかでいいから、それを精一杯感情を込めて歌ってみよう。好きな人に
届くようにとか、自分のつらさを思い切り吐き出してみたりとか、それぞれ
OKです。それに慣れたら、その曲を、同じように感情を込めて、今度は
ピアノで弾いてみよう。さあ、今度はどんな風二弾きたいのか、考える
ことができるはずです。 そうそう、どの曲でもメロディーと、コードはすぐ
覚えましょう。楽譜とにらめっこでは、表現するどころではないですからね。


「D&D(度胸、貪欲さ)=上達のための重要なポイント」
 「度胸」は人前で弾く度胸。セッションに参加したり、バンドを組んだり
しよう。まずは家族がお客さんでもOK.ちゃんと、目の前に座って聴い
てもらう。
 「貪欲さ」どんなメロディを弾きたいのか、どんなノリがだしたいのか、
貪欲に追い求めよう。レッスンで先生のアドバイスを一言残らず書き
留めたり、お手本を片っ端から覚えたり。お手本をMDにまとめて聴き
続けるのもいいし、もちろん、CDやライブもどんどん聴こう。Dでもう
一つ「ど根性」ってのもあるといいかな(笑)。それが難しければ、 開き
なおって「お気楽」で行きましょう。僕のレッスンに長く来ている人は
みんなこれです(笑)。

「目標を設定しよう!」
「練習を頑張る」とか抽象的なものより、もっとはっきりした、目に見え
るようなものにしよう。「10:30から11:00は絶対ピアノを弾く」「週1曲
暗譜する」「毎月1回セッションに参加する」「毎日1フレーズ覚える」
「A列車で行こう、を毎日1づつテンポを上げる。(120から始めても
1年で485と、とんでもない数字になってしまいますが(笑)」といった形
がいいと思います。


 長々と話してきましたが、もちろん一人で練習していると、煮詰まっ
てしまうこともあるでしょう。ピアノという楽器はとても特殊で、一人で
メロディと伴奏をこなせてしまう珍しい楽器ですが、もともと音楽は、
皆で演奏して心を通わせることを楽しむものだと思います。一流の
素晴らしい演奏を聴くのも、もちろんいいことですが、たまには、あえて
アマチュアのセッションやバンドなどを見に行ってみると、皆でのびのび
と音楽を楽しんでいる様子が伝わってきて、自分も一緒に楽しめるよう
な気がしてくるかもしれませんよ。周りでセッションやバンドをやっている
人がいたら、見に行くだけでもいいからどんどん行ってみよう。
お家で一人で弾くのが好きな人は、あまり急がず、ジャズってのはこうで
なきゃいけないとか、形も気にせずに、のんびり好きな曲を好きなように
弾いたらいいんじゃないかと思います。

あなたがこれからもずっとジャズピアノを楽しんでいくことを願って。

                           Swingy


まだまだ元気のでないあなたは、いやいや、もう元気の出たあなたもぜひぜひ!
素晴らしいHPをご紹介します。


リンク集の「仲間がいるよ! ジャズピアノ体験記」を一つ一つゆっくりご覧下さい!


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